若き日の松下さんの原体験に学ぶ

  ビットコインを集めて新しい能力を身につければ相手に勝てる、と考えたり、ピッグデーターさえあれば個人の体験や職人技など身に付ける必要はない、と考える若者は、無人車とドローンで物や人が運ばれる時代になれば真っ先に、その人自身の必要性が無くなるのではないだろうか。人の心が分かったり、人に感動を与える能力は自分自身の体験からしか身につかないものだと私は思っている。

 

 若い頃の松下さんの実体験(現在からだと百年以上前の体験だが、今も活かせるものである )から何をどのように学んで自分の信念にし、それによって身近に集まった人たちを生かし活用して事業を立ち上げていっったかを具体事例で紹介してみよう。他の人とは体験の活かし方が一味違うことを分かってもらえると思う。

 

【松下さんの名言】

●多くの体験を持つということは貴重である。成功にしろ、失敗にしろ。  

 ただ、その場合大事なのは、何か特別な体験、大きな体験をするというでなく、小さな

  こと、平凡なことであっても、それを自分なりにかみしめ深く味わうということではな

  いかと思う。そのようにすれば、すべての体験が自分の成長の糧として生きてくるだ   

 ろう。

 それなりに、その人の進歩向上の資となるであろう。

  同じ毎日を送っても、それ をするとしないとでは、長い年月の間に大きな違いが出て

 くるのではないだろうか。

●今日一日を振り返って失敗や成功を見出し、その味をかみしめる。これが体験である

●成功の過程に失敗の体験があり、失敗の過程に成功の体験がある。

 (若き日のイチロー選手は試合後、ただ一人ロッカーの前で全打席を振り返り、なぜ成功 

 したが、失敗したかを30分ほど反省していた。まさに失敗の中から成功の種を探してい

 たのだ。これがイチローの流儀だ)

●反省することなしにポカンと暮らしてしまえば、これは体験にならない。

●年長者であっても、体験を体験としてかみしめることをしなかった人は、先輩としての

 価値がない。

●真の意味の体験は、人間の頭の中にある。日々反省し、酸いも甘いもかみしめる。それ

 がいつか大きな体験となるのである。

●自分の考えや自主性で仕事をすることによってはじめて体験を積むのだと言える。

            

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「自主的な体験」とはどのようなものか。ホテルプラザの要請で新入社員に松下さんが話したものの一部を紹介する。

<成長のバロメーターは自分で測れ>

「心してやればどんな仕事でも興味が津々とわいてくる。“ここは人間道場なんだ”、と考えてはどうか。宴会や会合の場の設営などで、「もっとお客が喜ぶようにするにはどうすればよいか」、あるいは、「お互いが生きがいを感じるような職場にするにはどうすればいいか」を研究する。そしてその結果や反応を見て、また研究する。測る機械はありませんが、その時にもし成長のメーターがあればピーンと跳ね上がるでしょう」
 
そして、具体的なヒントとして、「ボーイであろうとドアマンであろうと、一人のお客様がお帰りになるまでに3回「有り難うこざいました!」と言う機会を作ることを心掛けてみよう。その結果アメリカ人のお客が本国に帰ってからホテルに手紙を寄こし、『日本のホテルプラザは大変よかった。友人にも日本に行けばここに泊まるようにとすすめている』と書いてきたなら、あなたの成長のバロメーターはピーンと跳ね上がる。それは、誰に測ってもらう必要もないことで、自分で測ればよいのだ、」と教えている。